「新型コロナは弱毒化する」は、どこまで本当か? 水谷哲也先生の動画が分かりやすい。

新型コロナウイルスが蔓延し始めた頃から、「ウイルスの専門家」を自称する人の中にも「ウイルスは感染力が強くなると弱毒化する」といった話をする人がいます。それを根拠として「高齢者や基礎疾患のある人を除いて感染対策は不要、感染すればよい」「新型コロナワクチンの接種は不要」といった主張も、よく見られます。

しかし、昨年のデルタ株では若者を含む多くの人が重症化・死亡しましたし、今年に入ってから日本でも蔓延したオミクロン株では重症化する割合は減ったものの、多くの人が感染して死者数は急増してしまいました。

2021年の末に2万人弱だった死者数は、8月末の時点で4万人を超えています。新型コロナの死者半数以上はオミクロンが主流になってからの短期間に亡くなっているわけです。50代以下の人も、現在までに1600人以上(年齢非公表分を除く)が亡くなっており、「弱毒化するからワクチンもマスクも不要」などという主張は、極めて不適切だったと言えるでしょう。

https://www.ipss.go.jp/projects/j/Choju/covid19/index.asp より

そもそも、「ウイルスの弱毒化」というのは、

  • 病毒性が強すぎると、別個体に感染させる前に宿主が死んでしまう確率が高い。
  • なので、病毒性が強すぎるよう変異したウイルスは広がらず、病毒性が低いウイルスが選択されていく。

という話でしょう。ならば当然、

  • 弱毒化するまでに、相当な数の死者が出るのでは?

という懸念が生まれます。しかも、

  • 新型コロナウイルスは、感染者が無症状の間にも他の人に感染する。ならば、無症状の期間に感染を広げる特徴はそのままに病毒性が強い変異株が広がる可能性を無視できないのでは

とも思われます。

このあたりのことを調べていたところ、東京農工大学感染症未来疫学研究センターセンター長/教授の水谷哲也先生の「『ウイルスは弱毒化する説』に根拠はあるか?① ウイルスが弱毒化する要因」という動画が、とても分かりやすく、納得のいくものでした。以下のサイトで視聴できます。

水谷哲也「『ウイルスは弱毒化する説』に根拠はあるか?① ウイルスが弱毒化する要因」|動画|日本医事新報社
水谷哲也「『ウイルスは弱毒化する説』に根拠はあるか?① ウイルスが弱毒化する要因」

内容のポイントは、以下の通りです。

  • 短い期間で見ると強毒なウイルスが人為的に何もなく弱毒化した例は無い。
  • ワクチンや治療薬など医学の発達により短期間に弱毒化することはある。
  • 新型コロナウイルスはRNAウイルスの中では変異しにくいので弱毒化しにくい。
  • 弱毒化してきたウイルスには長い歴史がある。例えばインフルエンザウイルスが誕生したのは1億年前。
  • 一方、コロナウイルスが誕生したのは1万年前。まだ歴史が浅く固定化されていない。今後もいろんな宿主に感染しながら強毒化するものも出てくる(実際、従来のコロナウイルスから出てきたのが新型コロナウイルス SARS-CoV-2)。
  • 新型コロナウイルスは野生動物で感染が広がる可能性がある。野生動物で強毒化したものが人に感染することも考えられる。
  • 結局、強毒化と弱毒化、どちらの方向に進むかは分からない。
  • ワクチンや治療薬で強毒化したウイルスを淘汰することで、弱毒化したウイルスが選択され蔓延していく、ということが考えられる。

結局、自然にまかせていては新型コロナウイルスが強毒化するのか弱毒化するのかは分からない、ということですね。ワクチンや治療薬を使わないと、確実に弱毒化する方向に持っていくのは難しい、ということになります。オミクロン株という、デルタ株よりも弱毒化した(といっても、ワクチン未接種者には起源株と同程度の病毒性である)変異株へと置き換わったのも、ワクチンや治療薬、そしてロックダウンやマスク着用の義務化(日本では「義務」ではありませんが)により、人類が新型コロナウイルスに対抗した結果です。今後も、流行状況・医療機関のひっ迫度合い・死者数に応じて、マスクの着用、ワクチンの接種など、感染対策は続いていくでしょう。強毒化した変異株が登場し、行動制限が必要になる、といった可能性も考えられます。もちろん、これ以上は強毒化した変異株があらわれず、徐々に元の生活へと近づいていく、というのが一番ですが。とはいえ、新型コロナウイルスが野生生物にまで広がっている現状を考えれば、少なくとも医療機関や高齢者施設でのマスク着用、定期的なワクチンの接種は続けられることになりそうです。

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