各地の図書館に、育児中の母親をターゲットにした「反ワクチン本」が並んでいる問題。

妊娠中・育児中の女性は、「ニセ医療」の恰好のターゲットです。それまで健康には興味が無かった人も、子供や自身の健康を気にするようになり、情報を集めようとするので。書籍でもネットでも、妊娠中・育児中の母親に向けた、さまざまな「ニセ医療」情報が溢れています。

とくに悪質なのは、育児中の女性を狙って「反ワクチン思想」に陥れようとする人たちです。そして、そんな人が書いた「反ワクチン本」が、多くの公立図書館に並んでいます。以前から、「これを読んで反ワクチン派になり、家族ごと不幸になる人は少なくないんだろうな」と思っていたところ、以下のツイートを見かけました。

まさに、「自然派カルト」による典型的な反ワクチン言説が、育児による負担、寝不足などで不安になりがちな女性の心に入り込んでくる様が、分かりやすく描かれています。もちろん、こうした主張はまったくの出鱈目です。

  • 「ワクチンには多くの添加物が含まれている」← 必要だから含まれています。有害な量は含まれていません。
  • 「自然な暮らしをしていれば病気にならない」← ウソです。今より「自然な暮らし」をしていた江戸時代以前の人は、ずっと病気になりやすかったです。今ならワクチンで防げる病気でも多数の人が死んでいました。
  • 「ワクチンはちゃんと考えて選択しましょう」← まともな医師なら100%、定期接種のワクチンをすべて打つことを推奨します。専門家でもない自分が判断するのは極めて危険です。素人が組み立てた飛行機に乗りたくはないでしょう。医療も同じです。

反ワクチンに洗脳されれば、子供を感染症の危険に晒します。ワクチンで防ぐことのできる感染症にかかった場合、障害が残ることもあります。死亡することだってあります。

「反ワクチン」を信じてしまった親は、「子供に良かれと思って」ワクチンを打たせません。それが悲劇を生んでしまいます。

しかも、「反ワクチン」から異常な「自然派崇拝」にハマる親も少なくありません。食事から添加物・砂糖・小麦などを完全に排除しようとしたり、「電子レンジで温めたものは体に悪い」などと信じて使わなかったり。どんどんと、異常な自然派健康法にハマり込んでいってしまいます。その先にあるのは、「ワクチンは製薬会社の陰謀」「闇の政府が世界を牛耳っている」といった、荒唐無稽な陰謀論です。こうした異常な思想に洗脳され、配偶者や両親・義両親との関係が悪化して家庭崩壊に至る、という例は少なからずあります。

このように、「ニセ医療」「陰謀論」の入り口になってしまう、「子育て中の女性向け反ワクチン本」が全国に図書館に並んでいるという状況は、改善されるべきでしょう。青少年向けに指定される「有害図書」より、はるかに「有害」なはずです。こうした自然派カルト・反医療・反ワクチンを主張する本こそ「有害図書」とし、少なくとも公立の図書館には置かないようにすべきです。

加えて、世の中には「反ワクチン」という信じてはいけない思想があるのだということを、義務教育でも教えるべきでしょう。また、妊娠中・育児中にそうした「自然派カルト」思想にハマって、不幸になる人が少なからずいることも、各地の役所で行われている母親学級・両親学級などで伝えられるべきだと思います。

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